開業したら、最初に分けるべきお金
事業のお金を迷子にしないために
開業すると、売上・仕入れ・家賃・生活費・税金とお金の動きが一気に増えます。この時期にお金の流れが混ざってしまうと、あとから整理するのが大変になります。最初にやるべきは難しい会計処理ではなく、お金を迷子にしない分け方を決めることです。
事業と生活のお金が混ざると、何も見えなくなる
個人事業主の場合、事業と生活は近いところにあります。売上が入った口座からそのまま生活費を払う、個人のカードで事業用の備品を買う——開業直後はこうしたことが起こりやすい。悪いことをしているわけではありませんが、混ざると「事業でいくら稼いだのか」「本当にお金が残っているのか」が見えにくくなります。
まず決めたいのは、事業用の銀行口座と事業用のクレジットカードです。生活費は毎月決まった金額を個人口座に移す。それだけでも、お金の流れはかなり見えやすくなります。
税金は、残ったら払うものではない
開業して売上が出ると、目の前の仕入れや家賃・広告費に意識が向きます。忘れやすいのが税金です。所得税・住民税・消費税・個人事業税は、売上が入ったその日に出ていくわけではなく、申告や通知のタイミングで後からまとめて来ます。売上が入るたびに使ってしまうと、納税の時期に「払う時期になって手元にお金がない」という状態になります。
正確な金額はあとから計算できます。ただ、ざっくりでも税金分を使い切らない感覚は、早めに持っておいた方が安心です。税金は、事業を続けるために最初から予定しておく支払いです。
仕入れのお金と、返済のお金も別に見る
飲食・美容・サロン・小売など、売上の前に仕入れが必要な事業では、売上が入っても全額が自由に使えるわけではありません。次の仕入れや材料の補充に使うお金を残しておく必要があります。開業直後は売上の波が安定しないため、ここを使ってしまうと次の営業が苦しくなります。
借入がある場合は、返済のお金も分けて考える必要があります。元本の返済は経費になりません。お金は出ていくのに利益計算に反映されないため、利益が出ていても返済後には手元が少なくなります。毎月いくら返済があり、売上が少ない月でも払えるかを早めに把握しておくことが大切です。
自分の生活費を、後回しにしない
開業すると、事業の支払いが優先になり、自分の生活費が後回しになることがあります。ただ、事業主の生活が成り立たなければ、事業を続けることも難しくなります。「残ったら生活費にする」では不安定です。最低限毎月いくら必要かを決め、事業からいくら引き出すかを先に決めておく。生活費を決めることは甘えではなく、事業を続けるための前提です。
開業直後から、すべてを完璧に整理する必要はありません。大切なのは「全部を正確に分けきること」より「お金が迷子にならない流れを作ること」です。事業用口座を決め、生活費を引き出す日を決め、税金分を使い切らない——こうした小さなルールが、あとから大きく効いてきます。
クラウド会計を入れる前にも、分け方が先
freeeなどのクラウド会計を使えば、口座やカードの明細を自動で取り込めます。ただ、口座やカードの使い方が混ざっていると、取り込まれた明細を確認する負担が増えます。事業用なのか生活費なのか、立替なのか返済なのか——明細は自動で入ってきても、その意味は自動では整理されません。ソフトを入れる前に、お金の通り道を分けておく。この順番にすると、経理はずいぶん楽になります。
宿り木として
開業したばかりの方に、最初から難しい会計の話を詰め込む必要はないと思っています。売上を作ることで精一杯の時期に、完璧な帳簿を求めても続きません。
まず整えたいのは、事業のお金が迷子にならない流れです。口座を分け、税金分を残し、返済日を把握し、生活費を決める——これだけで「今使ってよいお金」と「残しておくべきお金」が見えやすくなります。数字は開業した人を責めるためのものではなく、事業を長く続けるためにお金の流れを見えるようにするものです。土台を少し整えておくと、その後の経理も税金の支払いも、資金繰りも落ち着いて考えやすくなります。
「事業と生活のお金が混ざっている」「税金や返済に備えられているか不安」という方は、お問い合わせからご相談ください。開業前後の方の、お金の流れの土台づくりから一緒に整えていきます。

代表 増渕 俊介 代表あいさつを見る