Journal 業種ごとの特徴

飲食店のお金が残らない理由

売上だけでは見えない、利益と現金の流れ

飲食店は売上が見えやすい仕事です。ただ「忙しいのにお金が残らない」「売上はあるのに月末が苦しい」という悩みも起きやすい業種です。経営が悪いのではなく、飲食店のお金の流れに特徴があります。その構造を整理します。

売上があっても、粗利が残らないことがある

飲食店でまず見たいのは、売上そのものより粗利です。1,000円のメニューが売れても材料費が400円かかっていれば粗利は600円で、そこから人件費・家賃・光熱費・借入返済・税金が出ていきます。売上1,000円がそのまま残るわけではありません。

食材・油・米・酒類と原材料費が少しずつ上がっても、販売価格をそのままにしていれば粗利は静かに削られていきます。売上も客数も変わっていないのにお金が残らなくなったとき、原価率が少しずつ上がっていないかを確認する必要があります。

人件費は、忙しさと一緒に増えやすい

忙しくなれば人を増やす必要が出てきます。人が増えれば給与・交通費・社会保険・教育時間・シフト管理と、コストは広がります。ここで注意したいのは、売上が増えても自動的に利益が増えるわけではないことです。客数が増えても追加で人を入れなければ回らない、キャンセルや天候で売上が下がっても人件費は発生する——こうしたことが重なると、売上は増えているのに手元のお金は思ったほど残りません。忙しいことと儲かっていることは、必ずしも同じではありません。

家賃と固定費は、売上が少ない日にもかかる

家賃・光熱費・リース料・借入返済——これらは売上が多い日にも少ない日にも発生します。雨で客足が少ない日も、季節要因で売上が落ちる月も、固定費はすぐには下がりません。月間売上がどれくらいあれば固定費をまかなえるかを見ておくことが必要です。特に家賃は、開業時の判断がその後の経営に長く効いてきます。「この場所でやりたい」という気持ちは大切ですが、その家賃を払ってもお金が残る構造になっているかは、別に見ておくべきことです。

現金・カード・QR・デリバリーで、入金タイミングがズレる

飲食店では売上の入口が複数あります。現金売上はその日に手元へ入りますが、カード・QR決済・デリバリー売上は実際に入金されるまで時間がかかり、さらに決済手数料が差し引かれます。売上としては発生している、でも通帳にはまだ入っていない——このズレを把握していないと、売上はあるのに手元資金が足りないという状態になりやすくなります。売上金額だけでなく、いつ・いくら入金されるかを把握しておくことが大切です。

仕入れと在庫に、お金が先に出ていく

飲食店では売上より先に仕入れがあります。仕入れた食材が廃棄になったり在庫が増えすぎると、お金は残りにくくなります。メニュー数が多いお店では食材の種類が増え、在庫管理が難しくなり、ロスが増え、仕込みの手間も増えます。売上のためにメニューを増やしたつもりが、粗利や現場の負担を圧迫することがあります。何が売れているかだけでなく、何が残っていて何が捨てられているかも、見ておく必要があります。

借入返済と税金は、利益とは別にお金を減らす

開業時に借入をしている飲食店は少なくありません。返済が始まると毎月お金が出ていきますが、元本返済は経費になりません。利益は出ているのに返済後にはお金が残らない、という状態が起こります。税金も、利益が出た時期から遅れて支払いが来ます。忙しい時期に稼いだお金を使い切ってしまうと、後から税金の支払いで苦しくなります。利益だけでなく、返済と税金を差し引いた後に手元資金が残るかを見ることが必要です。

お金が残らないとき、いきなり細かい分析をする必要はありません。原価率は上がっていないか、人件費は売上に対して重くなっていないか、カードやデリバリーの入金タイミングは把握できているか、借入返済と税金を払った後に資金が残るか——この流れを順番に見るだけで、原因は見えてきます。小さなズレが重なっていることが、月末の不安につながっていることが多いからです。

宿り木として

飲食店のお金が残らない理由を、経営者の努力不足とは思っていません。売上を作るために仕入れ・人・場所・設備が必要な業種で、その分お金の出口も多くなります。忙しさの中で、どこにお金が詰まっているかが見えないまま続けていると、少しずつ苦しくなります。

数字は、現場を責めるためのものではありません。何にお金が出ているか、どの時間帯や商品で粗利が残っているか、返済と税金まで含めて手元資金が足りているか——そこを一緒に整理することが、宿り木の仕事です。売上の手応えがあるのにお金が残らないと感じたとき、その理由は必ずどこかに見えます。

「売上の割にお金が残らない」「原価や人件費が上がって利益が見えにくい」「借入返済や税金まで含めた資金繰りを確認したい」という方は、お問い合わせからご相談ください。飲食店のお金の流れを一緒に整理するところから始められます。

代表 増渕俊介の写真 宿り木税理士事務所
代表 増渕 俊介
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